あのね、先生。

「いるかなー…」

提出物を出さなきゃならない先生がいるはずの部屋まで来ると、電気が点いてた。

忙しい先生にだからここにはいないことが多いけど、今日はいるみたい。

探し回らなきゃならないと思ってたから、ちょっと得した気分だった。


ノックをすると中から先生の声がする。

「失礼します」

ドアを開けて入った瞬間、少し甘い匂いがして立ち止まった。

先生は入ってきたあたしを見てニコッと笑うと、「これ綺麗でしょ?」なんて言って手に持ってた花を見せてきた。

甘い匂いの正体はこれ。


「先生その花…」

「あら、知ってるの?」

「…前に貰ったことがあって」

先生は机の上にあった花瓶に小さなピンクの花を飾った。

小さな花がいくつも集まった綺麗なそれは、見覚えのあるものだった。
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