あのね、先生。
「茉央ちゃん」
「…違うの、ほんとに転んで…」
まだそんなことを言うから、頬を両手で包んで無理やり上を向かせる。
目に涙を溜めた彼女を見ると、余計にイライラは募って。
「誰庇ってんの。」
そのイライラが表に出た。
思いのほか低い声で、そう言うと茉央ちゃんはもっと泣きそうな顔になる。
「ほんとに…っ、庇ってない…」
怖い?
ごめん、でも無理だ。
俺ほんとに、もう歯止めが効かない。
「あたしがよそ見してて…、自転車とぶつかっちゃったの…っ、だからあたしのせいなの」
少し前からダメなんだ。
ユータの言う通り、無理やり抑えた気持ちが溢れて来てしまった。
茉央ちゃんのことになると俺自分でも引くくらい余裕ないんだよ。
それ、分かってる?