あのね、先生。
多分、もういいから俺のとこにおいで、なんて言っても茉央ちゃんは素直に頷いたりしないから。
加地くんとのことを曖昧にしたまま俺のことに来るような子じゃない。
まぁ、茉央ちゃんのそういうとこも好きなんだけどね。
「送ってく」
「いいよ、だって先生学校あるでしょ?」
「んふふ、今日土曜日だよ。部活も今日は休みだし、溜まってる仕事もないから大丈夫」
少しだけ残ってた仕事を片付けるために学校に行ってたけど、すぐにやらなきゃならないものでもなかった。
ちょっと出てきます、なんて中村先生に伝えて出てきたわけだけど、今日は来てる先生も少なかったし、急いで戻る必要もない。
「それに、会うの久しぶりだしね」
茉央ちゃんの手を引いて歩き出すと、キュッとその手を握り返してくる。
ずっと会えなくてモヤモヤしていた気持ちも、たったそれだけで飛んでいってしまうんだ。
俺こんなに単純だったかな。