あのね、先生。
「…電話に出なかったの、別に声が聞きたくなかったからじゃないの」
「ん、分かってるよ」
連絡が取れなくなった頃から考えるともう随分時間は経ってるのに、茉央ちゃんの腕や足には包帯がある。
これだけ時間が経ったのにまだ治ってないってことは、多分少し転んで出来たような傷とは言えないような、大きな怪我だったんだろう。
怪我してすぐのことを俺は知らないけど、きっと俺に見せちゃいけないって思うようなものだったんじゃないかな。
自分でも思うくらい、俺は茉央ちゃんに対して過保護だから。心配かけたくないって思ったのかもしれない。
「声聞いたら会いたくなっちゃうから、怪我が良くなるまで出ないでおこうって思ったの」
だけどさ、わがままかもしれないけどこういうことは俺に一番に話してほしい。
「茉央ちゃん、俺彼氏じゃないしこんなこというのおかしいのかもしれないけど」
立ち止まると、茉央ちゃんも立ち止まって俺を見上げる。額のガーゼが見えて、思いは強まった。