あのね、先生。
「…俺が泣かせてんだな」
そう言うと、やっぱり茉央は唇を噛んで必死に涙を堪えようとする。
俺のせいじゃないよって。悪いのは自分だからって。
…茉央にそんな最低な役回りさせてんのは、いつだって俺だ。
あの時だって、蓮くんはまだ茉央のことが好きで、茉央もまだ蓮くんのことが好きだったのに。
それを引き裂いたのも、蓮くんから茉央を奪ったのも俺だった。
最初からあの人に勝てるわけないのに。
それなのに茉央は、ちゃんと俺のことを見ようと頑張ってくれて。だから俺は傍にいれた。
こうなったのは茉央のせいじゃない。
蓮くんのせいでもなくて。
きっと、茉央の中から蓮くんを消すことが出来なかった俺のせいなんだ。
「…茉央さ、蓮くんのこと好き?」
涙を堪える茉央を見て、無意識に口から出たのは俺が一番聞きたくなかったことだった。
少し驚いた顔をした後、キュッと噛んでた唇を離して幸せそうに笑った。
あぁ、そんな顔するんだ。
俺、一度も見たことなかったな。