あのね、先生。

「俺忙しいし、帰るわ」

「んふふ、何しに来たんだよ」

絵に向かったまま俺の相手をする蓮くんは、きっとそろそろ俺が来るってことが分かってたんじゃねぇかな。

「あ、これあげるよ」

思い出したように振り返って、それを俺の方にポンと投げた。

「は?蓮くんの飲みかけ?いらねーよ」

「バカ、飲んでないから」

「じゃあ何?自分で飲むために買ったんじゃねぇの?」

「うん、そうなんだけど」

投げられたそれを見ると、見覚えのあるカフェオレだった。


「そんな気分じゃなくなったから、あげるよ。いらなかったら捨てて」

「気分って…」

変な人だな、相変わらず。

まぁ、別にいいんだけど。

「じゃあまたね、加地くん」

「ん、お邪魔しました」

俺、バカだな。
< 296 / 328 >

この作品をシェア

pagetop