あのね、先生。
「俺忙しいし、帰るわ」
「んふふ、何しに来たんだよ」
絵に向かったまま俺の相手をする蓮くんは、きっとそろそろ俺が来るってことが分かってたんじゃねぇかな。
「あ、これあげるよ」
思い出したように振り返って、それを俺の方にポンと投げた。
「は?蓮くんの飲みかけ?いらねーよ」
「バカ、飲んでないから」
「じゃあ何?自分で飲むために買ったんじゃねぇの?」
「うん、そうなんだけど」
投げられたそれを見ると、見覚えのあるカフェオレだった。
「そんな気分じゃなくなったから、あげるよ。いらなかったら捨てて」
「気分って…」
変な人だな、相変わらず。
まぁ、別にいいんだけど。
「じゃあまたね、加地くん」
「ん、お邪魔しました」
俺、バカだな。