あのね、先生。

抑えていたものが、たったこれだけのことでこうして表に出てこようとあたしを苦しめる。

もう1年以上経った。

そんなこと、今さら知ったって…


「もしかして、気持ちを伝えられない照れ屋さんだったのかもね。あたしの旦那もそうなのよ、口で言えない人だから」

…違うよ、先生。

彼はそんな人じゃない。

ストレートに気持ちを言う人だし、照れ屋だなんてことはありえない。

あたしにも何となく分かった。

気持ちを伝えられない立場にいる彼なりの、精一杯のメッセージだったんじゃないかって。

…どうしてあのときすぐに気づけなかったんだろう。


「あ、それ提出物?」

「…はい」

頭の中をグルグル回るのは、スターチスの花言葉。
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