あのね、先生。

「なんで…」

どうしてここに?


コツン、コツンと足音が聞こえてきた。

加地くんが戻ってきた?なんて思ったけど、なぜか一瞬で違うって分かった。

加地くんじゃない。

これは……


「…茉央ちゃん」


先生、だよね。


「…先生…」

「んふふ、それ、俺が描いたの」

「…知ってるよ。だって、ずっと見てきたんだもん」

だけど、あのとき捨てたと思ってた。

だから驚いたんだ。捨てたと思ってた絵がこうして完成してここにあるんだもん。


「でも、どうして?」

「約束したからね」

「約束?」

「この絵は茉央ちゃんのために描くって。ちゃんと最後まで描くって。」
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