あのね、先生。

ほんとは会いたかった。

来てるかなって、少し期待してたの。

少しでも大人になったあたしを一番に見てほしかったのは、先生だから。


「せんせっ!」

あたしの大きな声は、ボーッと景色を眺めてた先生にちゃんと届いた。

寄りかかってた体を壁から離して振り返った先生は、あたしを見つけてふにゃんと笑う。


「あ、来た」

「来るなら言ってくれればよかったのに」

「言ったら茉央ちゃん急いで出てくると思って。最後なんだからみんなとゆっくりしたいでしょ」

それで言わなかったんだ。


「ごめんね、ありがと」

「ううん。こんな綺麗な茉央ちゃん独り占めできるなら、いつまででも待つよ」

いつもより綺麗にした髪をフワフワと触ってそう言った。先生はストレートにそういうことを言うから困る。

キザすぎるセリフも、いつもみたいにふにゃんとした笑顔で照れもせず言ってしまうんだから。
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