あのね、先生。

「先生、今日はスーツなんだね」

「だって卒業式だよ?あんな緩い格好で来れないよ、さすがに」

「んふふ、似合ってる」

「いつものとどっちがいい?」

そんなの聞かなくても分かってるくせに。


「いつもの方が好き」

「んふふ、だと思った」

美術の先生っぽいとこが好き。

先生らしく緩い格好が好き。

今日みたいにキッチリした格好をしててもかっこいいけど、やっぱりあたしはいつもの先生が好きだな。


「あたし、少しは大人っぽくなった?」

「うん、すごく綺麗になった」

少しは先生に似合う女の子になれてるかな。

隣を歩いてもちゃんと彼女に見えるかな。

「んふふ、よかった」
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