あのね、先生。
「茉央ちゃん、卒業おめでとう」
あたしもね、この言葉はあのとき直接言ってもらいたかったんだよ。
ほんとは最後に美術準備室に行って、先生と話したかった。
あのときそれは叶わなかったけど、今こうしてそれが出来てる。
それで、十分だよ。
「ありがと、先生」
会いにきてくれて。
「ほんとはね、今日ずっと先生来ないかなって思ってたの」
「そうなの?じゃあ式にも参加すればよかったなー」
「んふふ、あたしが来てほしいって思うと、やっぱり先生は来てくれるの。今日は特に嬉しかった、ありがとう」
まるであたしの気持ちが分かってるみたいに、そばにいてほしいと思ったときに来てくれる。
前にも言ったことがあるけど、そのとき先生は言った。
″俺が会いたいって思ったときに会いに行ってるだけだよ″って。
先生が会いたいと思うときと、あたしが会いたいと思うときが一緒ってこと。
それだけで嬉しかった。