あのね、先生。
「…はい、集中力切れちゃったんで、ちょっと休憩しようと思って」
「俺もなんですよ」
ずっとパソコンと向き合ってると、ふいに別のことが浮かんだりする。
中村先生とはたまにこうして並んで休憩することがある。
歳近いし、唯一茉央ちゃんとのことを知ってるから、話しやすかった。
「元気ないっすね」
「…そう見えます?」
「篠原先生も、咲良と似て分かりやすいとこありますからね」
こんな風に普通に茉央ちゃんの名前を出すのも、中村先生だけ。
「…もう1年以上経ってるんです」
ズルズルと引きずってしまってるのはきっと、俺だけ。茉央ちゃんは違う。
「いつまでもこんな風に思うのはよくないって分かってるけど、でも…それでも、ダメなんです、俺」
他の女の人を見ても、ダメで。
「どうしても思い出しちゃうんですよ」