あのね、先生。

｢…結局茉央にも加地くんにもそのこと言えないままだよね｣

そう。何が一番問題かっていえば、それが何よりもまずかったりする。

咲良も加地も再来週の学祭に蓮くんが来ることを知らない。

そんなこと言えるか。

だって俺は別に２人の関係を壊したかったわけじゃない。ほとんど無意識の行動だったんだ。


｢今まで篠原先生の話しなかったから、茉央が今どう思ってるのかも分からないし。だけど会って何ともないってことはないと思うんだよね｣

｢…分かってる。咲良は知らねぇけど、加地は間違いなく会いたくないと思う｣

会いたくないっつーか、咲良に先生を会わせるのを嫌がるんじゃないか。

それは咲良の気持ちとか関係なく、何となく会わせちゃダメだって俺も加地も高橋も思ってるから。

咲良のことが分かるからこそ、ただ会って｢久しぶり｣なんて、笑えるような再会じゃないって想像できる。

決めるのは蓮くんだけど、多分蓮くんだって分かってると思うんだ。