あのね、先生。
「ほんとは当日になってドタキャンしようと思ってたんだけどね」
「お前、茉央ちゃんに会って…」
「大丈夫、大学には行くけどわざわざ茉央ちゃんに会いに行くようなことはしないから」
俺思うんだよ。
もしかしたら、偶然会ってしまって大丈夫じゃないのは、蓮じゃなくて茉央ちゃんの方なんじゃないかって。
俺もずっと会ってないから分からないけど、少なくともあの子は笑って「久しぶり」なんて言える子じゃない。
「ただ、前に進むべきだと思って」
多分もう俺が何を言っても蓮は学祭に行くはず。
「茉央ちゃんは知らないけど、俺はずっとあのときのままでとまってるから。それって変でしょ」
「…それで、もし会って茉央ちゃんも蓮と同じ状況だったら、どうすんの?」
ほんとは少し期待した。
「そうだったら、加地くんには悪いけど」
そうなればいいとどこかで思ってたから。
「もう絶対に離さない」
…積み上げてきたもんなんて、壊してやればいいんだ。