あのね、先生。

ちゃんと、覚えてる。

目が合わなくたって、あなたがあたしに背を向けてたって、分かるんだよ。

梨花があたしの名前を呼んでるのが聞こえたけど、もうそれに構っていられないくらい意識は彼に。


…あたしの大好きなふにゃんとした笑顔で話してるのは…

「っ…先生…!」

紛れもなく、篠原先生だった。


大きな声で呼んだつもりだったけど、あたしの声は先生には届かなかった。

先生は話を終えてあたしとは逆方向へ歩き出してしまう。

昨日よりも多い人混みを必死でかき分けるけど、先生の姿がだんだん見えなくなってきた。

「やだ…っ」

会いたい。

抑えてたものが、溢れた。
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