あのね、先生。
「先生っ…」
何で追いかけてるんだろう。
これってあたしが一番やっちゃいけないことなはずなのに。
だってあたしは優真と待ち合わせしてて、これから一緒に回る予定で。
…優真が不安にならないように、もう先生のことは忘れたつもりでいたのに。
「…茉央?」
微かに聞こえたあたしを呼ぶ声。
それはあたしの後ろから聞こえた。
振り返らなくたって声の主が誰かなんてすぐに分かった。
ギュッと目を瞑った。
…ごめん、優真。
「茉央!」
聞こえてないふりをした。
一度止めた足を、再び進めてしまった。
振り返ればまだ戻れた。それなのに、そうしなかった。出来なかった。