あのね、先生。
会うのはもう1年ちょっとぶりかな。
その間、あたし先生を忘れようって頑張ったんだよ。ちゃんと優真と向き合おうって思って、頑張ってたんだよ…
優真のこと好きになれてるのかもしれないって思い始めてたの。
「ほんとはね、声聞こえてた」
「え…?」
「先生、って呼んでたでしょ?」
何度も呼んだ。
周りの人にジロジロ見られるくらい大きな声だったのに、先生は一度も振り返らなかった。
「振り返っちゃダメだと思ったんだ。そんな権利ないって思ったし、こうして触れちゃうって分かってたから」
「…あたし、何回も呼んだのに」
「うん、ちゃんと聞こえたよ」
先生は困ったように笑って、抱きしめていた手をそっと離した。