だから、好きだって言ってんだよ
イジワルなアイツ
「よし、完璧!」
部屋の全身鏡の前に立ったあたしは、クルッと一回転してニコッと笑う。
派手過ぎず地味過ぎず、どっからどう見ても普通の女子高生だ。
やっぱり、最初が肝心だって言うもんね。
浮かないように、目立ち過ぎないように、スカート丈は膝より少しだけ上にした。
ホントはもう少し短くしたいけど、入学早々先生や先輩に目を付けられたくはないから、しばらくは大人しくしとくんだ。
ーーコンコン
気合いを入れていると部屋のドアが突然ノックされた。
「愛梨(あいり)ー?起きなさい、遅刻するわよ」
お母さんの声が聞こえてハッとする。
えっ?
もうそんな時間!?
慌てて時計に目をやる。
ただ今、8時10分……
じゅ、10分!?
「ウソっ!!」
顔からみるみる内に血の気が引いて行く。
いつの間にそんな時間になってたの!?
信じられない。
新しい制服が嬉しくて、思わず浮かれてしまっていた。
ーーガチャ
「あら、起きてたの?なら、さっさと下に下りてらっしゃい」
ドアが開いたかと思うと、呆れ顔のお母さんがヒョイと覗いて淡々と言う。
ヤバい、遅刻するっ!
< 1 / 303 >