だから、好きだって言ってんだよ
「ウソつき」
思わずボソッと呟いた言葉に、陽平は振り返って眉をひそめた。
聞こえていたことにビックリしたあたしは、目をそらそうとしたけどまっすぐ見つめられてそれが出来ない。
「なにがだよ?」
「甘いもの、好きなくせに」
なんでもらわなかったの?
深田さんのマドレーヌ。
お弁当だって。
好き嫌いが多いなんて、ウソのくせに。
「あ~……期待させたら悪いだろ?」
「…………」
そうだね。
マジメなんだよ、陽平は。
正義感が強くて、頑固者で、イジワルで。
だけど優しくて。
カッコ良くて。
人に期待を持たせたり、傷付けるようなことはしない。
それが陽平だって知ってるから。
一番ズルくて汚いのは、それを聞いて嬉しいと思っちゃってるあたしだ。
だって、陽平は深田さんと付き合う気がないってことでしょ?
期待させたら悪いって、そういうことなんだよね?
「愛梨がくれるものは、ちゃんと受け取るから」
「は、はぁ……!?」
なっ……なに言ってんの?
やめてよ。
真顔でそんなことを言わないで。
嫌でも期待してしまう。
舞い上がっちゃう。
ねぇ、それって……どういう意味?
もうダメだ。
あたし……。
陽平が好き。
まりあに言われて、ようやく素直に自分の気持ちを認めることができた。
「はは、真っ赤じゃん」
……っ。
「う、うるさい!誰が陽平なんかに」
そう言って、プイとそっぽを向いた。