だから、好きだって言ってんだよ


無邪気に笑う陽平を見ていると心臓がドキドキうるさくて、胸が締め付けられる。



知らなかった。


恋って、苦しい。


陽平の言葉や仕草に一喜一憂して、振り回されて、傷付いて。



ささいなことに気分が上がったり下がったり。



こんなに左右されやすいだなんて、ダメだよね。



「愛梨?」



「えっ……?」



わ、あたしったら。


花火を持ったままぼんやりしちゃってた。



隣から陽平に顔を覗き込まれてドキッとした。



「西澤と芹沢……いい感じだよな」



「え?うん、そうだね」



あの2人が付き合うのは時間の問題かもね。


急激に仲良くなってるし、まりあも芹沢君のことを意識しているっぽいし。



「ツラくねーの?」



なぜだかわからないけど、陽平の目は悲しげに揺れていた。



ん……ツラい?



「なんで?」



わけがわからなくて首を傾げる。



「好きなんだろ?芹沢のこと」



「そんなわけないでしょ」



もしかして、誤解してる?



「強がるなって」



眉を下げて笑う陽平。


違うのに、何回そう言っても「強がるなって」と聞き入れてくれなかった。



違うのに。


本当に違うのに。



あたしが好きなのは陽平なのに。


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