だから、好きだって言ってんだよ
八つ当たり


新学期。



「おはよう、愛梨」



相変わらず可愛いまりあが、隣の席でニッコリ笑う。



「おはよう」



あたしは複雑な気持ちで今日の日を迎えた。



「あいりん、おはよう」



「あー、うん。おはよう」



前の席にいる陽平とは目を合わせずに、坂上君に向かって微笑む。


だけど刺すような視線を感じた。



「おい、ムシすんなよな。バカ愛梨」



「し、してないからっ!」



「ウソ付け、俺の方を見ないようにしただろーが」



「そりゃ、朝から陽平の顔なんて見たくないからね」



あー。


やっぱりあたしは陽平の前では素直になれない。



ドキドキしてるくせに、会えて嬉しいくせに。


深田さんのことが頭をよぎって、胸が苦しい。



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