だから、好きだって言ってんだよ
「お前なぁ……こう見えて俺は、卒業式の時3人に告られたんだからな!ま、全部断ったけど」
「ふーん。よくおモテになりますこと」
自慢気に言う陽平を横目でちらりと見やり、淡々と返す。
陽平は中学の時からそれはそれはよくモテて、こんな風にあたしに自慢してくるなんていつものこと。
あたしはいつもそれを適当に聞き流していた。
その度に陽平は不機嫌そうな顔をしていたけど、気にしない。
陽平の自慢にいちいち付き合ってらんないもん。
「お前なぁ……少しは気になったりしねーのかよ!」
「なんであたしが?全然気にならないよ。っていうか、陽平が誰に告られようと興味ないし」
「は、そうかよ」
陽平はさらに不機嫌そうな顔で、じとっとあたしを見た。
きっと、生意気なあたしの反応が気に入らないんだろう。
それなら言わなきゃいいのに。
羨ましがって欲しかったのかもしれないけど、そんな自慢は羨ましくも何ともないんだからね。
「なんで振っちゃったの?彼女が出来るチャンスだったのに。ひとりくらい、可愛い子はいなかったわけ?」
皮肉を込めて言ってやった。
「いたけど、好きじゃないのに付き合えるかよ」
「付き合ってから、好きになることだってあるでしょ」
「ねーよ」
「ふーん」
ふと窓の外に目を向けると、校庭の隅っこにある桜の木が目に入った。
満開に咲いた桜の花びらが、風に吹かれてひらひらと舞っている。
……綺麗 。
そのあと陽平が何かを言っていた気もするけど、あたしの耳には入らなかった。
体育館に着くと在校生や保護者の人が温かく迎えてくれて、入学式は何事もなく無事に終わった。