だから、好きだって言ってんだよ
前からやって来る陽平を、まともに見ることが出来ない。
体がカチコチに固まってしまったかのようだ。
相変わらずチャラチャラして、制服を着崩している陽平。
周りの女子が、急によそよそしくなったのがわかった。
やっぱり、クラスの女子からも陽平はモテているらしい。
「陽平君、おはよう」
「あー、おっす」
まりあがニッコリ微笑んだ後、陽平がいつものように返事をした。
昨日のことなんて、何事もなかったかのような普通の声。
「お、おはよ……」
ちらっと見上げると、陽平もあたしの方を見た。
目が合って、気まずさを感じる。
それは陽平も同じだったみたいで、しどろもどろになりながら目を泳がせていた。
「おー……」
「あ、あのねっ……」
ムシされるかもって思っていたけど、気まずいながらも返事をしてくれた陽平に、映画のことを切り出そうと口を開いた。
「今週の日曜なんだけど……」
「おーい、三浦~!昨日言ってた漫画持って来たぞ」
だけど、あたしの声はクラスメイトに遮られた。