ねぇ、明日香
「ハァ、ハァ、ハァ…」
息を切らしてそぅっと屋上の扉を開ける。
大粒の雨が屋上のコンクリートを叩き付けていた。
幸いまだ誰も来ていないようだ。
ゆっくりと歩を進めていく。
ドキン、ドキンと痛い程心臓が脈打つ。
綺麗に脱ぎ揃えられた上靴の横に、雨に濡れた白い封筒が置かれていた。
そっと手を伸ばす。
『遺書』
ドキン!と強く鳴り響く。
下でザワッとどよめく音が聞こえてハッとする。
救急車が駆け付けたようだ。
雫は慌てて封筒をポケットにしまい、屋上を後にした。