ねぇ、明日香
消失
ふらふらとした足取りで教室に戻る。
すずが心配そうにこちらを見ているのが目に映る。
それに何かアクションを起こすでもなく、あたしは自分の席に着いた。
学年主任が教室に入ってくる。
「えー、もうみんな知っていると思うが、森が飛び降りた。…先程、搬送先の病院で亡くなったそうだ。」
ザワッと一瞬どよめいた後、クラスはシーンと静まり返った。
槍のような視線が突き刺さる。
言葉に出して言う者は誰ひとりいない。
「今夜は自宅に戻るそうだ。通夜は明日、葬儀は明後日の日曜日だ。学校として参列する。みんな、森を送ってあげなさい」
終令が済み、学年主任が教室を出ていくと、重い空気を吐き出すように口々に溜め息が漏れた。
「土日って」
「さいあく。デートなのに」
「強制参加かよ」
愚痴が鳴り止むと、一斉にこちらを見る。
睨み返すと慌てて目線を外す。
所詮、傍観者はその程度。
自分に被害が及ぶことを最も恐れ、何もしない。何も出来ない。
だからそう、明日香のことも、分かっていたくせに誰ひとり助けなかった。
そんな腰抜け共にあたしを批判する権利あんの?