三人の私
友達
祖母の認知症への苛立ち、両親の理不尽さへの苛立ち、そんな気持ちを抱えながら中学生活を送っていた。

中学に入学して、他の小学校から来たある男子と同じクラスになった。
中学一年生なのに、すでに身長が175cmもあるらしい。でも痩せているから、ひょろっとした感じだった。その背の高さで目立っていたけど、それだけじゃなくて、いつも明るくて、友達に囲まれていたのが目を引いた。

私は小学生の頃、嘘ついてばっかりだったせいでいじめられたし、嘘をつくことは両親からもさんざん説教されたから、嘘をつくことはやめることにした。

でも、話しかけられてもろくに返事もしないほど根暗なのは相変わらずだったし、どうやって人と接していいか分からなかったから、「どうやったらあんなふうに明るくなれるの?」って不思議に思いながら彼を見ていた。


中学に入学して三カ月ほど経っても、私は友達ができないまま、一人、机でじっとしているばかりだった。

幸い、いじめられることはなかった。

その頃、転校生が来た。東京から引っ越してきたらしい。

美菜という子だった。

こっちは地方の田舎だったから、東京から来た美菜は注目の的だった。
うちのクラスだけでなく、他のクラスの子達まで押しかけてきて、美菜を取り囲み、「ねぇねぇ、東京ってどんな所?」「マルキュー(渋谷109)とか行ったことあるの?」「その腕時計、可愛い!どこで買ったの?やっぱ東京のお店?」と、質問責めだった。
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