私に恋をしてください!
『この間、春木屋書房のことでソラがうちの会社に電話かけてきたでしょ?電話代わる前に出た私の同期が私の名前とソラから電話だと伝える大きな声が、遥香さんの耳に届いたんだよ』

話を続けてくれそうだったから、俺は葉月の頬にあった両手を離した。

『電話が終わってから、遥香さんが私の席に来て"柳井くんと知り合いなの?"って聞いてきたの。その言い方が、何とも威圧的だったからどうしたんだろうと思ったら、ソラと同級生だったんだと今分かって、何だかちょっとだけスッキリした』
「ちょっとだけ?」

高松がその時威圧的になった心情の答えは、本当のところは本人に聞いてみないと分からないからね。

でも俺の思うところは違うようだ。
葉月の言葉の揚げ足を取る結果になったようで俯いてしまったから。

「話したくなければいいよ。でも、俺はちょっとだけじゃなくて、全てのモヤモヤした葉月の心をきれいにしたいな」
『神戸さん…』

俯いて小声でボソボソ言った一言が神戸の名前だった。

食堂での俺と神戸の会話全てを聞いていたと言うことは、葉月にしてみればかなりヘビーな内容を聞かせてしまったな。
昨夜のホテルでは全く話に触れないまま葉月に夢中になってしまったけど、しっかり話さなければならないことだ。
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