私に恋をしてください!
「前からよく一緒に出掛けていたたまちゃんのことだよ」
『誰だ?その人は』

お父さんはネクタイを外してお母さんに渡しながら言う。

「忘れたの?河合環ちゃんだよ。今はウエディングプランナーをやっているの。まだ見習いだけどさ」

私の交友関係にうるさい割にはすぐ忘れてしまうお父さん。

『悪い友達じゃないだろうな』
「アールに通っていた子に悪い子はいないよ」

アールは仮にも"お嬢様学校"と言われているところなんだけど。

『あまりに遅くなるようなら、門限を復活させないとならないかもな』
「は?私はもう社会人だし、門限をなくすことを条件に龍成社に入ることを承諾したのに」
『それは葉月の生活態度次第だ。羽目を外すようなことがあると変な男に捕まってしまうからな。久美子(クミコ)、私は先に風呂に入ってくるよ』

そう言うとお父さんはリビングを出て行った。

『今はあまり波風立てない方がいいんじゃない?』

お母さんはお父さんの夕飯の準備をしながら私に言う。

「だって、このままだとまた門限ありの生活に逆戻りじゃん」
『だからってまともにお父さんと張り合ったって葉月に勝ち目はないわよ。今までだってそうだったじゃない』
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