私に恋をしてください!
『あの頃の社長は5番目の奥様である女優の三枝里絵子(サエグサ リエコ)さんとの間に生まれた剛くんがまだ1歳に満たない頃で、その上のきょうだいたちもそれぞれの事情で生まれてきているから、家族がバラバラでね。剛くんの面倒を見させられたりすることも結構あったの。健吾くんとはその時の知り合い。当時はまだナルガクの幼稚舎から初等部に上がった頃だけどね』
「それだけを聞くと、お父さんとの接点がまるでなさそうだけど」

確か、お父さんはずっとコミックの編集者として働いていて、ヒット作を連発したことでどんどん出世してしたと聞いていた。

そんなお父さんと社長秘書のお母さんがどうやって出会うのよ。

『お父さんは上昇志向の強い人間でね。成瀬川家に取り入ろうと時々出入りしていたのを私が行く度に毎回目撃していたの。年齢が1つしか違わない社長とゴルフに行ったり、それはもうマメだったのよ。当時は30代も後半でバツ2。でも有力なマンガ家とのパイプが太い人を、社長は放置出来なかったみたいね』

お母さんはコーヒーにミルクを入れてかき混ぜた。
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