私に恋をしてください!
「私に優しくしてくれてありがとうってこと」
『男はみんな野獣とでも思ったの?君がいいと思わないと、俺も満たされないの。だからお礼なんていらないよ。お互い様なんだから』
「うん」

私はたまらずソラの胸に顔をうずめた。

『こんな時にこんな疑問持つのはムード壊してしまうようで申し訳ないんだけどさ・・・』
「いいよ。何?」
『当たり前の話なんだけど、葉月のご両親は、2人でこんなことでもしないと当然葉月は生まれてこなかったわけだろ?』
「こんなこと?・・・うん」

あんまり考えたくはないけど、この年齢になったらもう割り切らないと。

『さっきマスターのお店で"一度だけだった"とお母さんは言ってたけど、一度だけ交われる、そしてそのまま葉月の年齢以上の間夫婦をやり続けるって、どんな心情なんだろうな、って思ってさ。好きでもない人を受け入れたわけでしょ?まさか無理やり襲われたわけでもないだろうし』
「お父さんお母さんの話は、娘の私にも分からないことだらけだもん」
『夫婦のことは当事者にしか分からないことだよ。でも、マスターの"ボタンを掛け違えたまま暮らしてきた"って言う言葉が、すごく引っかかってさ』

マスターの言葉は、私には全く意味不明だったけど。
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