私に恋をしてください!
かなり軌道に乗り、営業局内での私の立場も認められるようになってきた11月の上旬。

私は部長と一緒に月に一度の大きな会議があるため、販売会社のひとつである首都出版販売に来ていた。

エレベーターに乗ると、茂木部長は"17"のボタンを押した。

「え?18階じゃないんですか?」

いつもなら書籍仕入部のある18階の会議室を使っている。

『今日は他で塞がっていて取れなかったらしい。今日はひとつ下の書店営業部門の会議室を間借りするそうだ』

首都出版販売はあるオフィスビルの12階から20階にテナントとして入っている。
だから、どの階も作りはほぼ一緒。

エレベーターを降り、右手一番奥が会議室なのは、18階も同じだ。

定刻通りに到着し、会議室に向かって歩いていると、私の右側から人が出てきたのと同時に・・・

何かがぶつかった。
そして私の右腕に熱いものを感じた。
・・・熱いどころか、熱湯?

目の前には、驚いてこちらを見る、スーツ姿の若い男性。

一瞬の間の出来事に、私は言葉が出なかった。

『申し訳ありません!』

そう言うと若い男性はそれまでいた給湯室に入り、タオルを水で濡らしてきた。

『そんなのじゃダメだ。氷はないか?』

茂木部長が私の右腕をまくりながら若い男性に言う。

『は、はい!』

ビニールに入れた氷を若い男性が用意して、私の右腕に当てた。
でも・・・あ、時間!
< 16 / 216 >

この作品をシェア

pagetop