私に恋をしてください!
すると今度は、販売四部と五部の間にある派遣社員が座るシマの人から声を掛けられたので、彼女達のデスクに出向いた。

『清水さん、桐生さん狙いなんですか?』
「え?全然全然」
『だって、声が桐生さんに媚び売っているように聞こえましたから』
「この声は元からです!」

普段はそんなにイライラしないのに、何だか今日の彼女達の言い方には腹が立った。

「はい、これ仮伝票から切り替えた本伝票の受領書を引き取って来たので綴じておいてください!」

と、さっき販売会社から受け取って来た伝票を派遣社員のひとりの席に置くと、私は自分の席に戻った。

やっぱり私は何も変わっていない。
声を変えることなんて出来ないし、身長を高くすることだって出来ない。

『どうしたの?そんな声を荒げるなんて、清水さんらしくないね』

声を掛けられたのは、日下部長だった。

私が事の顛末を話すと"ふぅん"と聞いてくれた部長。

『でも、それってまともなリアクションだよ。普通そんなこと言われたら誰しも腹を立てるでしょ』
「大人げなくてすみません」
『違うと思ったら素直に異論を唱えるべきだと思うよ。主張できるようになった清水さんは成長したと僕は思う。もっと自信を持って仕事しなよ』

とソフトな口調で話す部長に、私は絆された。
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