私に恋をしてください!
年末休みの初日。

私はソラと一緒にコミケの会場に来ていた。
以前はきちんと同人誌を製本して販売していたのだけれど、社会人になってからこの夏も冬も製作が追いつかず、一般参加者としてこの会場に来ていた。

それでも、顔馴染みはいる。

『ルナちゃん、今回もブースの申し込みを見送ったの?』
「うん」
『あれ、珍しい。彼氏連れ?』
『あ、はい、どうも』

そう。
私のペンネームは"氷川 月(ヒカワ ルナ)"。
ここに来る仲間内は私の本名を知らない。

『ヘタにお前の名前を呼ばない方が良さそうだね』

ソラもそう言って空気を読んでくれた。

コミケは年々人が増え、今日も人がごった返している。

『初めて来たけど、噂通りのすごい賑わいだね』
「いろんなジャンルの人が集まって、色んなサークルも集まっているんだよね」

私は誰かに会ったり、何かを買う目的もなかったので、1時間ほどでソラと会場を後にした。

『次のコミケって、来年のお盆だよね』
「うん」
『その時、ブースを設けてまた同人誌販売しようよ。葉月の作品をたくさんの人に見てもらわないと、評価もしてもらえないじゃん』
「そうしたいけど・・・」
『俺も手伝うからさ』

ファミレスに向かい合わせで座る私達。
ソラは私に優しく言う。
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