私に恋をしてください!
葉月が男として俺を意識する行動を起こさないと、恋愛としては発展しないだろうし、それではマンガの表現力も上がらない。

そう考えながらも具体的にその行動とは何なのかが全く浮かばないまま、葉月をうちに連れ帰った。

会社が借り上げているアパートは、築10年のワンルーム。

シングルのベッドにローテーブルにテレビ。
シャワーとトイレが一緒になっているユニットバス。
キッチンはガスコンロが1口だけの簡易的なもの。

龍成社の専務の娘がこんな部屋に入ってショックを受けないだろうかと葉月の表情を伺ったけど"ここのテーブルに道具を広げるね"と、全く気にしていない様子だ。

葉月はいつも大きなカバンを持ち歩いている。
その中にマンガを描く道具が入っているらしい。

しかし、葉月はカバンを開けない。
"これ、どこに置いておけばいい?"と聞かれたので俺がカバンを預かってテレビの横にあるスペースに置いた。

…重い。
こんなカバンをずっと持ち歩いているのだろうか。

でも火傷を負わせた時にはビジネスバッグしか持っていなかったから、この重いカバンは休日限定なのだろう。

「お茶でいい?」
『いらないよ。お構い無くぅ』

そう言いながら葉月は部屋を見渡す。

どうやら、テレビの上の棚にある本が気になるようだ。
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