私に恋をしてください!
「へぇ、どんな人?」
『私をめいいっぱい愛してくれる、優しい人』

"めいいっぱい"に力を込めて俺に話してくれた神戸。

『私の我儘も許してくれて、甘やかしてくれて、すごくカッコいいの』

そう言って、神戸は俺の目を見た。

『変わらないね、柳井くん。あのころと同じ爽やかさ』

彼氏のノロケの後にそんなこと言われたって、嬉しくも何ともない。
そしてあの頃とは違うんだよ、神戸。
俺は、俺なりに磨いてきたつもりだ。

外見ではなかなかそれを醸し出すことが難しい。

「俺、神戸ともっと話したい」
『それって、私をお持ち帰りしたいってこと?』
「そうじゃないけど・・・」

男としてはそうしたいけど、再会してすぐにそんなことをするって最低だろ?

神戸が俺を見る目は、酔っている目なのか?
彼女と久々に会った俺には、その判断がつかなかった。

『私、ちょっと酔っちゃって。そろそろ帰るね』

顔が赤く、足元がおぼつかなくなっている。

「送るよ」

この時の俺の言葉に、下心がなかったかと言えば嘘になる。

ずっと、思っていた女性とやっと会えた。
でも彼女には愛する彼氏がいる。

彼女の家に行けば、何か進展があるのだろうか。
それでも少しばかり期待して、彼女と一緒にタクシーに乗った。
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