私に恋をしてください!
"ピー"と、洗濯機から音がした。
つけ置き洗いが終わった。

と、言うことは俺は何もせずに1時間も葉月がマンガを描いている姿を眺めていたってこと?

描いている内容は、今日葉月と俺とで出掛けた美術館のこと。
会話もほぼ同じだけど・・・ひとつ違うのは、葉月の描くカップルは、手を繋いでいた。

俺達には、まだ人前でそこまで出来る大胆さはない。
人前でなければ軽くキスは・・・出来るんだけど。

葉月が気持ちとして俺をどう思っているのかが分からない中、マンガのためとは言え、人前で恋人同士になれる自信が俺にはなかった。

でも、葉月がこういう表現をマンガ上でしているのであれば、葉月の願望としては手を繋いで歩きたいと言うことなのか?

『あ、ぬいぐるみ干さなくちゃ』
「俺、干すよ」

と、窓際のカーテンレールにぺちゃんこなぬいぐるみを干した。

いつも愛用している愛着のあるぬいぐるみなので、ちょっと吊るされているのがかわいそうに思えた。

すると、

『この姿、かわいそうだよね。だからすぐに抱っこできるように明日には元に戻すからね。だから、明日もここに来てもいい?』

そんな言われ方をされて、断れるわけがないし、俺もそうして欲しかった。

「いいよ。もっと飲み物用意しておくから」
『お構いなくぅ』
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