私に恋をしてください!
「あ、ありがとうございます」
『また今度、火傷の具合を確認させてね、葉月』
「え?」

この時私は分かった。
多分私は彼に合わせる必要があるんだ。

「うん。またあの店でランチしようね、ソラ」

エレベーターで会話できるのは、このくらいだ。

私達よりも先に17階で降りたソラと女性。
私はその2つの背中を羨ましく見送った。

『へぇ、清水さんもスミに置けないね』
「あ、いや、そんな・・・」
『大丈夫。誰にも言わないよ。うちの社内に知れたら、何かと面倒でしょ。お父さんのこともあるし』

エレベーターは1つ上に行くだけだから、すぐに着いてしまった。

『さ、彼氏のパワーで、会議を乗り切ろう』

本当にソラからパワーが貰えたのかは分からなかったけど、概ね会議は穏やかに、かつ新刊に対する反応のいいものだった。

『ここ最近の清水さん、いい顔になってきたよ』

会社に戻る電車の中で日下部長から言われた。

「そうですか?私は何も変わったつもりはないです。ただ、皆さんの足を引っ張らないように踏ん張ってはいますけど」
『それだけじゃないね。昨日見せてもらったマンガだって内容も変わったよ。エレベーターの彼のせいかな』

日下部長は私を見て微笑んだ。
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