私に恋をしてください!
アパートに到着すると、1階の部屋の鍵を開けた。
女性が1人暮らししているのに、1階の部屋か。
物騒だな。

そう思っていたら、中には人がいた。

男性。
よく考えなくても分かる。
・・・彼氏だ。

彼氏を見た途端、子供のように"ゴウぅ"泣きながら彼に抱きついた神戸。
彼氏は"ゴウさん"と言うのか。

「由依(ユイ)、こんなになるまで飲んじゃダメだろ?」
『ごめんなさい』

程なく、神戸を横抱きにした彼。

「彼氏さん、ですか?」
『そうですけど』

あまりにも愚問だった。

『さ、貴方も中へお入りください。お茶、ご用意しますよ」
「いや、僕は…帰ります。明日も仕事なので」

深夜になり、電車もなくなっている。
神戸と話がしたくて来たけど、まさか彼氏がいるとは思わなかったから、俺には中に入る理由がない。

『そんなことなら、明日は僕だって仕事です。さらに酒を飲ませるわけじゃないですし、それに貴方はまだ若いみたいですから、まだ明日を考えて行動する年齢じゃないでしょう』

神戸を抱えながら話しているから、かなり腕が疲れると思う。
けど決して体勢は崩れない。

『さ、早く入ってください』

彼氏の勢いに負けた。

中に入れてもらい、お茶を入れてくれた。
神戸は寝てしまったようだ。

けど・・・俺には分かってしまった。
神戸は寝たふりをしている。
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