私に恋をしてください!
彼氏との仲良しさ加減を俺にアピールしているように思えた。
現に彼と神戸との間に、俺の入る隙はなかった。

そのことを俺に知らしめるために今日ここに呼んだのか?

酷な話だけど・・・何故か俺の中ではスッと神戸への思いが抜けていったんだ。
恋に冷める、じゃなくて・・・

恋が、自分の中から"抜けた"。

次の恋に踏み出せるかどうかは分からないけど、神戸と彼を心から応援できるようになっていた。

『周りに認められるような社会人目指して、地道にがんばるよ。しばらく恋はお預けかな』

神戸の前でそう言って、彼氏からタクシーチケットを貰って・・・
俺はその場を去った。

でも俺は、彼の魅力を知りたくなった。
男性になかなか靡かない性格だと思っていた神戸が、彼を好きになる理由を、知りたかった。

彼に会ってから2週間後、神戸から何となく聞いていた彼の勤務先であるゴールドヘブンリーホテルをダメ元で訪ねた。

俺でも知っていた"成瀬川剛"という名前。

傍から見れば、ただのお坊ちゃんだとイメージしていたけど・・・先日のアパートでの態度や、今、この場での俺への応対を見ていると、洗練された、けど人間らしい男性のように思えた。

ブライダルサロンの奥のドアから出てきた彼は、当たり前だけどスーツだ。
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