私に恋をしてください！

妻って…そもそも局長って結婚していたの？
お父さんからも聞いたことがないよ。

『君が専務の娘だったり、縁故入社であることを隠しているのと同じことだよ』
「はぁ…」

結婚していることを周りに知られることがそんなに都合が悪いのだろうか。

局長は日下部長と仲良しだから、部長は当然知っている様子。

『で、その義弟の友人は、君もご存知の首都出版販売の柳井空くんだ』
「え？どうしてソラを局長がご存知なんですか？」
『それを聞くなら"何故私がソラを知っていることを局長がご存知なんですか？"だろ？』
「あ、そうですね。はしょりすぎました」

局長はいつの時も余裕だ。
話す言葉も淀みやどもることがないし、慌てるということを知らないのではと思うくらいの沈着冷静さ。
でも、御曹司にしてはとてもフランクで、部下のためなら体当たりな局長であるともっぱらの評判だ。

『義弟が柳井君と飲みに行った時に、君の存在を知った。そこから俺に話が来たんだよ。営業局にいるマンガ好きの女性が、柳井君の想い人だって』
「想い人って・・・私のことですか？」
『君以外考えられないだろ？ただでさえ営業局にいる女性は高松と金澤と君しかいないんだし』