私に恋をしてください!
『そして、それが原因でまともな感情で女性を抱けなくなっていることも、陸から聞いた』

健吾さんはやっぱり陸から全部話を聞いていたんだ。
そりゃ、そうだよな。
だってそうじゃなきゃ今ここで俺と会っていないだろうし。

でも何で"セミプロ"なんだろうか。

『そんなに汚らわしいか?セックス』
「そこまでしなくても、その前までの行為だけで満たされますから。手を繋ぐとか、抱き締めるとか、キスするとか」

健吾さんにそう言ってから、俺は気づいた。
今、自分に嘘をついたことに。

一昨日の夜、葉月の家の前でのこと。
あんな甘くて、柔らかくて、いい香りのするキスなんて、俺は生まれて初めてだった。
目の前の葉月に、夢中になった。

それと同時に、俺の体に異変が生じた。
そんな男の部分を見せてしまい、葉月が怖がったりしたらどうしよう。

葉月本人に確認をしたこともないのに、先のことを想像し、不安に陥ってしまう。

健吾さんは俺の顔をじっと見た。
目力があり、威圧的にも思えた。けど・・・

『君、今明らかに嘘をついたでしょ。いや、正確には、頭と体で考え方のズレが生じているんだ』
「それは・・・」
『清水に嫌われたくないから、踏み出せないんだろ?』
「え、どうして彼女が誰なのかを知っているんですか?」
< 91 / 216 >

この作品をシェア

pagetop