あの日に出会ったキミと。
…あれはなんだったのかな。


一ノ瀬の少し苦しそうな顔と、私の火照った顔。


彼は、一体どうしたんだろう。


人のいない小道を、一ノ瀬に抱かれたまま通り過ぎていく。


「一ノ瀬…」


「…」


彼は、無言で、私の顔さえ見てくれなかった。


茜色に染まる小道の、虫たちの鳴き声を、黙って聞いていた。
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