それでも、やっぱり君が好き。
* * *
オレは1-B、つまり自分のクラスに戻り、中学からの優しき親友――――――渡部勇輝(ワタベユウキ)の前の席に座る。
勇輝は柔らかい、色素の薄い髪をしていて、どこから見ても優しそうな雰囲気のイイやつだ。
俺の相談にだって乗ってくれるし、俺の受験勉強にも力を貸してくれた。
勇輝無しではきっとこの高校に入学することはできなかったのだと思う。
でも、ここよりもっと頭のいいところに行けたはずなんだけどな……。
勇輝は丁度、何かのパンフレットのような、冊子のようなものを見ていた。
もしかしたらこの高校のものかもしれない。
少し前に、男子テニス部に入りたいとかなんとか言っていた気がする。
席に座ったオレに、勇輝はパンフレットのようなものを閉じて「おかえり」と笑って声をかけた。
「ん」
挨拶を一文字で返し、大きく息をつく。
それから勇輝に、オレは軽く頭を下げた。
「あー……邪魔しちゃって悪いな」
謝るオレに勇輝は笑いながら左手をひらひらと振った。
「いいよ、別に。圭太と喋ってたほうが楽しいし」
「勇輝……!」
何だか感動的な会話になっていた。
こんなことを普通に言える勇輝はすごいと思う。