それでも、やっぱり君が好き。
 

 オレが近づいたことによってか、さっきよりも顔が青いし、震えが大きくなっている。


 受け取ることに悩んでいるのかもしれない。



 早く行かなきゃ授業に遅れちゃう、と焦ったようにショートヘアの女子が呟くと、ポニーテールの女子が心配そうに俯(ウツム)いた凛の顔を伺う。



「凛ちゃん。大丈夫?」



 彼女はこくり、と重く頷いた。

 
 絶対大丈夫じゃねーだろ……。



 彼女はゆっくりと息を吐き、オレの顔を一瞬見てすぐに逸らす。




「……あ……ありが、とぅ……」



          
 凛は目をぎゅっ、と瞑(ツム)り、躊躇(タメラ)いながらもハンカチを受け取ろうとしたが、



「あぅ……。さ、先行ってるっ!」



 くるっと後ろを向き、走り去ってしまった。


 とても速い足だった。



 でも、彼女にとっての最大級の感謝の気持ちなのだろう。



「あ、凛ちゃん!」



 彼女たちはどうすればいいのかとオロオロしていたが、やがてオレにごめんね、と謝ってから凛の後を追っていく。

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