それでも、やっぱり君が好き。
「凛のことが好きだ。――――――――付き合ってくれ」
きっと、あの二人に察しはついていたと思う。
茜はつまらなそうに溜息をついて、静かな光のない瞳でオレを見ていた。
茜の警戒が薄くなり、後ろに隠されていた凛の姿が見えるようになる。
小刻みに震える細い足でどうにか立っている凛を見ていると、場違いだが生まれた直後の小鹿を思い出す。
俯いた顔は耳まで赤く、なぜ凛が赤くなっているのかと疑問に思った。
「……あ、あの、私、男の、人……っが、こ、怖くって……だ、だから……」
「知ってる」
途切れ途切れに言っていた凛の顔が、すっと前を向く。
オレと目が合うとすぐにまた俯いてしまった。
「だ、だったら、……何でっ……」
凛の一言一言が愛しくてたまらなかった。
男が怖いのに、オレと一生懸命会話をしてくれている。
それだけで嬉しかった。
オレは凛を真っ直に見つめながら一歩足を踏み出し、もう片足も前へ動かす。
凛がビクッと怯えた様子で後ろにたじろぐ。
茜が反応したが、凛を見つめていたオレは気が付かない。