それでも、やっぱり君が好き。
 セミロングのふわっとした、肩甲骨(ケンコウコツ)より少し上の長さの栗色の髪。


 両耳の少し上から、白いリボンがちょこんとのぞいている。

       
 大きな瞳にかかる長い睫毛(マツゲ)が綺麗。


 化粧っけもないのに、まるで人形のような可愛い少女だ。



 別に、大きく騒いでいたわけでもないのに、自然と視界に入ってきた。


 というか、吸い寄せられるようにあの少女のことを見てしまっていた。




 少女は、オレが見つめていることに気が付かず女友達と楽しそうにお喋りをしている。


 話してみたいな、と思いながら今度こそ戻ろうと少女を見ながら体だけ左に向けた。



 その瞬間。



 可憐な、花が咲いた。




 正確には少女が微笑んだのだが、花が咲いたと例えるのがしっくりくる。


 見ればクラスの男子もオレと同様にその笑顔を見て幸せそうな顔をしている。


 ……あの笑顔ハンパない。


 オレは見ず知らずの彼らに強く共感した。



 ところで、さっきの女神の笑顔を見てから心臓が暴れまくっている。


 それに、どうしようもない欲求感を感じる。


 どうしたものだろうか。

 

 ……なんて、とぼけることはできない。


 オレは、この感情を知っている。



「一目惚れしちゃったんだ、あの子に…………」


                        
 オレの、聞き取れないくらい小さな呟きは生徒達の喋り声に掻き消された。

< 5 / 105 >

この作品をシェア

pagetop