それでも、やっぱり君が好き。


「気付いてる? 圭太。あいつの、気」



 ……“あいつ”。それは。
         

 冷や汗が頬にたらりと伝った。



「……え? あいつ……って、誰のこと?」



 オレはこの問いに答えないでくれ、と願いながら、言った。



 勇輝は表情の変化を見せずに、尻を叩きながら立ち上がる。



「ならいいよ。もうチャイム鳴るだろうし行こうか」



 勇輝は閉じたままのケータイの時計を見てからオレに言い、屋上のドアを開けて一足先に階段を降りていく。



 そこから陽の光の入った明るい階段が目に映ったが、オレの心は全くの反対だった。 


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