それでも、やっぱり君が好き。


 声だけでチャラそうだと分かる、男の声が聞こえた。


 なんとなく、声だけで今している表情も頭に浮かぶ。




 涼峰、凛……!?




 男に声をかけられているんだ。


 そろり、そろりと忍び足で壁の角に顔をひっつける。



 そして、なるべく顔が壁から見えないように、目だけ出した。


 多分きっと、髪の毛とか頬とか出てると思うけど。




 そこで見えたのは四人のチャラい男達に囲まれている、二人。


 青い顔で震えている涼峰さんと、キッと男達を睨む茜。


 涼峰さん達に声をかけているのは二人だけで、残りの二人は煙草を吸ったり、その様子を見ているだけだった。


 茜、すげぇ……あんな男達を相手にあんな睨んでる――――――と思ったが、よく見ると涼峰さんの手を握る茜の手が震えている。



 そんな彼女達を見ながら、銀色に光るピアスをした男が言った。


 
「……聞いてるんだけど?」



 ズボンに手を突っ込んで言う、銀色のピアスをした不良。



 それだけで、彼女達の恐怖心を揺さぶるのは満足だった。



 余計震えだした涼峰さんを、茜はガクガクする足で懸命に立って支えている。

 
 そんな仕草は姉のようだ。


< 78 / 105 >

この作品をシェア

pagetop