それでも、やっぱり君が好き。
そんなオレに、男がこっちにこい、という仕草をした。
「とりあえず一発、来いよ」
馬鹿にされまくりなのが悔しくて、感情任せに拳を後ろへ引き、思いっ切り前に向ける。
だが、オレの拳は男の手の平で止められていた。
おい、マジかよ…。
「やっぱり、当たんねぇな。喧嘩やったことねぇだろ」
答える代わりに舌打ちをする。
ふっ、と笑ってから言う凛々しい不良のリーダー。
「そんなもんなくせに、よっぽど凛を守りたいようだな……」
「どうせオレは喧嘩もろくにやったことのないもやしっ子だ。悪いか?」
ふと、低いうめき声が耳に入った。同時に、衣擦れの音や木の葉を踏んだような音が聞こえる。
オレが退けた三人の雑魚キャラが意識を取り戻したようだ。
状況は更に悪くなってしまった。
カッコよく立ちながらも、心の中では冷や汗が洪水を起こすほど分泌されている。
やべーよオレ! やっべーよオレ!!
あのいけ好かない茶色の男は立ったままでオレを見つめている。
あれ、オレの態度がいけなかったのかな……。