それでも、やっぱり君が好き。
「おい、一年生」
このイケメンボイスは『祐吾』と呼ばれていた茶色いリーダーだ。
緩んでいた筋肉が一気に縮み上がる。
「なっ、まだ何かあんのかよ……!?」
顔を上げ、何度もした睨みをきかせる。だが、全く効果は無し。
少し先に立つ凜とした顔の男は薄く微笑んで、自らの名を口にする。
「オレは羽柴祐吾(ハシバ ユウゴ)。お前は?」
なぜ名前を聞いてくるのかと謎に思いつつ、オレも自分の名をぼそりと言った。
「……朝倉圭太」
意地悪して小さな声で言ったのに、不思議と伝わっていたようだ。いや、不思議を通り越して怖い。
羽柴は「じゃあな、圭太」と最後に声をかけると、今度こそ仲間達を引き連れて帰っていった。
ここは、校舎の影で日陰になっていて、だいたいじめじめしている。
そんな地面に、抵抗もなくドサリと座った。思わず、校舎の壁に背中を預けてしまう。
「……くそったれ」
吐き出すように言う。
色々な感情が溢れすぎて、若干混乱状態だ。気持ちが一つに定まっていない。
生まれて初めてのケンカ、涼峰さんと茜が不良に絡まれたこと。
たったの二つのことだけなのに、気持ちはそれ以上に多い。それと同時に、考えることも。
あれ、オレって何しに来たんだっけ……。衝撃的すぎるものを見て、記憶が飛んだのかな。
だんだんと閉じていく、目の前の世界。
そうだ、オレはあいつらのコ〇・コーラを買いに―――――。
呆気無く、オレの目の前は真っ暗になった。